<   2011年 09月 ( 1 )   > この月の画像一覧

価値経験と観光

d0253056_19135768.jpg
先日、志摩市観光協会の友人を頼って、松島や三陸海岸と同じリアス式海岸の広がる志摩市にお邪魔し、牡蠣、海苔の成育風景や観光の傾向などについて拝見させていただきました。

志摩は、子どもの頃に家族に連れて行ってもらったことがある思い出の地で、民宿、そこで出されたサザエ、海など内陸県に住む子どもとしては、大変印象深かった覚えがあります。
小学生の頃からひねくれ者だった私は、ディズニーランドのようなテーマパークはあまり好きではなく、良い印象が無いのですが、志摩については、この民宿とサザエ、迷路の様な町の印象が未だに残っているのです。
それからかれこれ約20年。
いずれ子どもができたら連れて行きたい候補地の一つでしょう。

今回も、夜は美しい月、波の音、そして時折見られる流れ星の中、日々の現実を忘れさせられるひとときを過ごすことができ、また昼間はプライベートビーチを覗かせていただき、きれいな海に感激しました。

2005年9月より日本ライン広域観光推進協議会(木曽川夢空間事業連絡会として現在は事業縮小)に、2008年4月からは美濃加茂市商工観光課に勤務している私は、観光についてはかれこれ6年関わっております。
その中で、現在関わっている地域に訪れる方々の価値経験について、未だに十分理解していない点があると自覚しております。
見慣れた土地、見慣れたひととの関わりの中で、来訪者にとって何が価値なのかについて、つい自問してしまいます。

2007年1月より日本国政府は「観光立国基本法」を施行し、「観光立国基本計画」に基づき施策展開がなされ始めました。外国人観光客についても、「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」(通称:外客誘致法、1997年施行)を発端に、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を始め、大々的に動きができてきました。
そして、観光立国推進基本計画においては、2006年の実績で733万人であった外国人観光客を、2010年に1,000万人にまで増加させ(*1)、更には2013年に1,500万人、2016年に2,000万人、2019年に3,000万人との目標設定(*2)がなされています。

実際に、旅行商品やその手配、販売を担い、飯を食っている旅行会社や、観光客が来訪し、消費することで収益を得ている地域の宿泊業あるいは観光関連サービス業の方々にとっては、それらの観光客に関する数値や一人当たりの消費額が死活問題となります。
国内の人口減少や消費性向(旅行形態)の変化を踏まえ、一度の旅行にかける予算の高い外国人観光客、とりわけ最近では中国人の富裕層に光が当たるのもごく自然な流れと言えるでしょう。
断続的に緩和が続いている中国人観光客のビザ発給要件の更なる緩和も言われています。

一方、施設・テーマパークの魅力の減退(ハコモノ化)、地域のテーマパーク化(消費を促すだけの機能として定着すること)についても、本来の価値を減損させ、儲かれば良いという発想に陥ってしまう怖れがあるということも、観光に関わる身としては注視する必要があるのだと思います。
合掌造りの建物に掲げられる「営業中」の看板は、その葛藤が顕著に現れた例と言えるでしょう。
また、中国国内にも日本以上に美しい自然や立派な施設、公園、テーマパークがあることも忘れてはいけません。
以前、視察団やメディアをある施設に案内したことがありますが、あまり魅力に感じていただけなかったという失敗(気づき)もありました。

いずれにしても観光の本質は、「価値経験」にあると思います。
お金に換えがたい価値経験をどうプロデュースするか、あるいはその舞台、受け皿を地域としてどう築き、潜在的な来訪者の価値経験へとつなげていくかということなのだと思います。
日本人であろうと、欧州の方であろうと、中国の富裕層であろうとそれは変わらないでしょう。
価値経験は、一概にありきたりの見せ物を見せ、なるほどといってバスに乗って帰ってくるもの(中国で「走馬観花」馬にのって遠くから花を眺めると言うのだそう)だけから得られるものではないのだと思います。

例えば、東北の復興を願い何度も足を運ぶことも価値経験、志摩の美しいビーチでサーフィンすることも、はるばるイギリスへ飛行機に乗り彼女に会いに行くこと(たまたまそういう人に空港で出くわした)も、新たなビジネス機会を探り企業訪問に訪れることも、芸術文化に触れるために文化施設へと足を運ぶことも、いずれも価値経験と言えるでしょう。
そこに出会いや共感、時に苦い思い、あるいは知られざる「じまん」の発見など、人生における新たな経験の機会が待っています。

岐阜県では、「じまん」を磨き、触れる機会を多くつくることができないかと言うことで2007年より「飛騨美濃じまんプロジェクト」というのが始動しています。
プロジェクトによる大々的なブラッシュアップやプロモーション活動にとどまらず、何らかの価値経験を創発する有機的な交流機会の創造を、地域の資源(ひとや環境、街や施設)や立地などの実情を踏まえ、戦略的且つ体系的に取り組むこと、そのマネジメントや地域における他の要素との連携・連動のコーディネートは、いわゆる観光行政において求められることであると思います。

その上での数字。
そう考えると、単に施設への来場者数やコンベンションの開催件数のみが唯一有益なベンチマークとなり得る訳ではないと思います。
地域の実情や戦略に応じた目標設定が必要で、確かに国の予算は持っていますが、観光庁に従順である必要も無いでしょう。
岐阜県美濃加茂市には、中山道太田宿、日本ライン下り、日本昭和村、山之上観光果樹園などの主要と言われる観光スポットがありますが、トータルでこれらの施設の数字は右肩下がりです。
しかし、それに囚われることなく、産業立地や周辺観光地・資源との協力関係を含めてみれば、価値ある交流機会を今以上に創出する余地は十分にあると考えています。
そのための核となる手段として、「外商を基軸にした産業政策の循環モデル」(後日機会を見て記載したいと思います)であると考え、今後、方針を明確にするための「地域経済計画」の立案、共有の必要性を提案し、調整していきたいと思います。
当地においては、産業(主に製造業)を中心とした他地域との多面的な都市間交流が、有機的な交流機会の創出、他地域との協力関係の構築、都市としての求心力の強化につながり、ひいては交流人口の増加につながるという考えです。
これは、飛騨高山、白川郷、下呂温泉、国宝犬山城といった全国レベルの周辺観光地とは違った当地ならではの観光に対するスタンスでしょう。

志摩は、美しいリアス式海岸、ビーチ、牡蠣や海苔、海産物、あるいはもてなすひと。
やはり名古屋付近の海とは明らかに違う。
その核となる魅力を中核とし、国立公園としての環境・景観の保全や、それぞれが味をもつ小規模民宿を大切に、その魅力の発信をがんばっていただきたいと思い帰ってきました。
また、志摩は、なかなかその活用が難しいでしょうけれど養殖真珠(ミキモト)発祥の地でもあります。
また、行きたいと思います。感謝!

2011年9月3日
岐阜県可児市にて

<関連リンク>
伊勢志摩Rias
伊勢志摩国立公園
観光立国(観光庁)
観光庁2010年4月発表資料
飛騨美濃じまん観光スタッフブログ

---
*1 観光庁「観光立国推進基本計画」, 2007.6, pp.3
*2 観光庁「訪日外国人3,000万人へのロードマップ」
[PR]
by miyatahisashi | 2011-09-03 19:06 | 中部・岐阜