9.11から10年 — 今、地方からできること

2001年9月11日。私は当時経済学部の学生として、テレビでニューヨークの光景を目にしました。
何千人もの人がその災難に巻き込まれた中、私が次にとった行動は、ドルを買うというものでした。一時的に下がるドルを買って利ざやを稼ごうという単面的な発想に囚われていたのです。ウォールストリートに憧れがあったのも事実で、当時は金融関係への就職も考えていました。
しかしその後において、それらの行動の浅ましさを感じることとなります。人の不幸を契機に懐を肥やす節度ない行動。私は、何のための金か、金融か、あるいは富かについて、考えさせられることになったのです。

自動的に資金が集約できる国家についても素朴な疑問を抱いていました。権力統治のシステムが確立されているばかりでなく、様々な問題や不透明性が指摘されるなか、代替される仕組みをもたない国家システム。
当時、より効果的な公共的な意思決定や資本の分配システムが構築できるのであれば、もはや既存の国家システムは必要ないだろうと考えました。
そのような思索の経緯もあり、大前研一氏の著書の巻末で政策学校「一新塾」をみつけ、門を叩き、また後に大学は中退しました。

国家のみならず、経営危機に瀕したビッグスリーのCEOがプライベートジェットに乗って公的支援の要請に駆けつけ、更に高額の報酬を取り続けていること(*1)に批判が向けられたことも記憶に新しい事実です。
慣習や、環境はその人格を大きく左右するものなのでしょうか、あるいはその人の価値観との相互作用がそのような結果を招く要因になったのでしょうか。

ソビエト連邦の解体や、中国の資本主義システムの導入により、社会(共産)主義体制は事実上終焉。サブプライム問題や国家財政の破綻危機、英国やノルウェーなどでの暴動の頻発は、私たちの生活の基盤を成す自由市場主義経済に対しても、十分なものではないということを時折、知らしめられます。
一方で、価値・信用を数値化したお金、その融通、経済循環に変わる、価値交換の効果的な仕組みについては、今のところ有事・緊急時以外には想定できません。
我々は、今後も実体経済の中で生活をしていくことになるでしょう。
マルチプルやサイバーと言った浮遊する資金的動き(*2)を理解しながらも別の次元で、実体経済やボーダレス経済を軸に地域や生活者の豊かな生活の基礎を作り上げていくこと、また、その背景としての自己管理や制御を市民・国民の手で築きあげていくことが大切なのだと思います。
スイスのワインが国外に輸出されなかったり、ドイツの企業グループが、国内の資本家による自己資本比率を高めるよう指導をされていたりと、外部の思惑とは別に、地域や国が国民の豊かさを守るポリシーを貫いている姿勢も、多くの国で見受けられます。
社会における富を築き上げ、享受し、守る手段として資本(あるいはそのパラダイム)を活用する術を、今日ではもたなければならないのだと思います。

2011年3月11日の東日本大震災では、タイミングもあって、今まで未踏の地であった宮城に、結果として7度足を運ぶこととなりました。
同じ国民としてできることをしたいという想い、9.11の反省、そして、多くの犠牲の中で今までと違った考え方や仕組みが問われることになるだろうと感じ、動きました。
また、安直な増税議論や国家への依存度の高まりに危機感を覚えました。

現在私は、ある地方自治体で、国外の地方都市との多面的な都市間交流の枠組み構築及び、それを踏まえた都市としての立地優位性の構築についてを中心的課題として捉え、取り組んでいます。
分野や地域など、様々なレベルでの多元化が進み複雑化する社会の中で、3.11も含めた悲しみや苦しみの経験を糧にし、人類史上繰り返されて来た侵略と支配の歴史やDNAに終止符を打ち、平和と共生の理念を以て、新たな社会秩序を生み出す。
それを、一地方からできること、一地方だからできることとして、今問われる役割を発揮したいと考えています。

エブラハム・リンカーンは、「黒人奴隷の解放無くして自由の合衆国は存在し得ない」との信念を持ち、南北分裂から統合のプロセスにおいて役割を果たしました。彼がいなければ、今日のアメリカや世界は違ったものになっていたでしょう。
原発事故、国民国家の危機、繰り広げられる戦争、食糧・エネルギー問題。今、直面している文明の齟齬から、有志は手を取り合い、社会を再び創造することが、人類として、この時代に生かされた者としての使命であると感じ、私も今後、断続的な努力、行動を重ねたいと思っています。

2011年8月27日
岐阜県にて

<関連リンク>
政策学校「一新塾」
本文は「一新塾」メールマガジンにて配信される予定です

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*1 Brian Ross, Joseph Rhee. ‘Big Three CEO flew private jets to plead for public funds’. Nov. 19, 2008. abc NEWS.com
*2 大前研一『新・資本論—見えない経済大陸へ挑む』, 2001.10, 東洋経済新報社
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by miyatahisashi | 2011-08-27 17:14 | その他
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